百目鬼恭三郎『読書人読むべし』新潮社

昭和五十九年一月十五日発行
ISBN:4103148039


この本の宣伝のための架空講演

日本の古典
 『万葉集』や『源氏物語』から読み始めるのは感心しない。まず『百人一首』から入るのが一番。

日本の古典
 全集・叢書のどれかひとつを揃えて、安心してはいないか。いい本がずいぶん抜け落ちている。

飲食の本
 日本酒なら坂口謹一郎『日本の酒』*1、中国の食物なら篠田統『中国食物史』*2、ワインならアレック・ウォー『わいん』……。

歌舞伎の本
 芸談集『役者論語』は玄人向きだが、素人にも面白い。『舞台観察手引草』は評判通りの名著。

旅の本
 江戸期のものは各地の風俗を伝えて興味深い。斎藤茂吉『ドナウ源流行』、チェーホフ『シベリアの旅』は落とせない。

探検記と地誌 日本編
 探検記は数少ないが、そのなかで注目すべき作品は。地誌を知る手掛りは吉田東伍『大日本地名辞書』が随一。

探検記と地誌 外国編
 ヘロドトス『歴史』、クラヴィホ『チムール帝国紀行』、ムアヘッド『白ナイル』『青ナイル』など、名著傑作は数え切れない。

神話
 ギリシア神話は勿論、日本、中国、インド、古代オリエント、北欧の神話の知識もひと通り知っておきたい。

伝説と昔話
 日本の聖徳太子伝説や源義経伝説、外国のトリスタン伝説やドラキュラ伝説ドン・ファン伝説をもう少し詳しく知るには。

中国の古典
 日本の古典に親しむためには、中国の古典は避けて通ることができない。まず『論語』を含む経書を。

中国の古典
 詩・史書・怪奇諏には読むべきものが多い。なかでも、人物を生々と描き出した『史記』の面白さは類がない。

伝記
 自伝なら長谷川伸『ある市井の徒』*3タイ・カップタイ・カップ自伝』、伝記ならジョン・オーブリー『名士小伝』などは実に楽しい。

辞書
 『日本国語大辞典』と『大漢和辞典』があればもういいというものではない。役に立つ小さな辞書がどうしても必要である。