兵藤裕己『〈声〉の国民国家・日本』NHKブックス900

2000年11月20日 第1刷発行
日本放送出版協会
ISBN:414001900X


序章 声と日本近代
    一九三〇年代の浪花節 柳田民俗学 桃中軒雲右衛門 声の|共同体《ユニゾン》 もうひとつの近代文学

第一章 貧民窟の芸人
    桃中軒雲右衛門と新網芸人 浪花節組合の発生 明治の三大貧民窟 膨張する貧民窟
    賤民芸能者・願人坊主 浪花節の母胎・チョボクレ チョボクレ・チョンガレの伝播
    七色節・五色節という新名称 流行するヤンレー節と踊り囗説 「難波ぶし」から浪花節

第二章 演説・大道芸・浪花節
    「下等」の演芸 自由民権運動と演説 祭文の流行 デロレン祭文の歴史 江戸祭文から上州祭文ヘ デロレン祭文の全国伝播 ヒラキの大道芸 ヒラキの閉鎖 祭文から浪花節への転向 声が創る心性の共同体

第三章 声の伝播、物語の流通 
    日本人ならだれでも知っている物語 日本社会の言語的アイデンティティ 柳田民俗学のバイアス 都市的な大衆芸能 祭文の出し物 語りの技術 明治一〇年代の講釈番付 何が語られたのか 講談・落語との衝突 国権論と浪花節
第四章 講談速記本から浪花節
    講談から浪花節へ 講談の源流i太平記読みの系譜 乞胸の大道芸 やくざの原型 大道講釈と浪花節 読み物と講談  赤穂義士伝の登場 講談速記本の流行 講談の退潮と浪花節の台頭 浪花節の「好感化」 社会・王義者と右翼浪人 労働者と浪花節

第五章 「家族《フアミリー》」のモラルと法制度
    左翼思想への「防塞」 仇討物の流行 仇討と孝のモラル 仇討物の基本構造 親分子分という組織原理 法制度という悪役 制度外のファミリーと無宿渡世 祭文語りの「家」 座頭の「家」 当道盲人の「家」 瞽女の「家」 ファミリーとしての貧民窟 やくざ・芸人・国民

第六章 物語としての国民
    シマという共同体 芸人のモラル やくざのモラル モラルが牛む「国民」 隠蔽された天皇 国民国家のモラル 崩壊する家族秩序 自然主義文学と「家」 都市の不安定な大衆 自由恋愛とアナーキズム 桃中軒雲右衛門の出自

第七章 桃中軒雲右衛門の声
    テロルとモラル 大衆をからめとる浪花節 浪花節芸人としての宮崎滔天 侠と狂のあいだ 日露戦争の熱気のなかで こころざし世にならびなき雲右衛門 東京を席巻する雲右衛門 赤穂義十伝をどこでおぼえたか 「南部坂雪の別れ」 雲右衛門節の特徴 雲右衛門の声 声、母なるもの 近代の国民叙事詩の誕生

第八章 日本近代の解体
    国民国家アポリア 戦争と浪花節 自然主義社会主義 大逆事件への道 夏目漱石と桃中軒雲右衛門 浪花節=庶民芸術論 昭和の浪花節ブーム NHKの全国ラジオ調査 ラジオ放送とファシズム 社会主義と社会ファシスト 近代国家の解体 日本「近代」の帰結 おわりにーポスト近代の国民
    参考文献
    あとがき